Melting Pot of Thoughts

SaaSスタートアップのCTOです。思考の整理のため考えたことをメモ書きレベルでアウトプットしていくブログです。

自己組織化と独断は両立する

近頃のエンジニア組織では”自己組織化”の概念がよく取り沙汰されています。『個々人がおのおの組織全体のことを考えて自律的に行動することで、結果秩序だった組織になる』という考え方です。

ボトムアップ型組織の考えであり、個々人の意欲や能力を活かす方法として注目されています。トップダウンに組織のリーダーがすべてをマネジメントするのではリーダー以上の結果は出ないが、自己組織化された組織だと個々人のメンバーの力がフルに活用されるためトップダウン以上に良い結果を生みだすことができるという考え方です。

 

自身の肌感覚としても、エンジニア組織においてはこの”自己組織化”という概念はとても親和性が高いと感じます。エンジニアのような専門職だとリーダーがすべての分野を把握することは困難でありメンバーのほうが知識・技能が上回ることが多々あるため、メンバーの力を活かすことが重要だからです。

(余談ですがこの”自己組織化”という概念は個人的考えとしては、専門職のようなメンバーの知識・技能がリーダーのものを上回る仕事の他、意欲・ホスピタリティが仕事の結果に影響しやすい接客業やカスタマーサポート業等においてもうまくワークしそうだと感じています。)

 

自身が所属しているエンジニア組織においても、この自己組織化という概念はすごく大事にしており、社内への説明の際にもこのキーワードをよく使っています。
その一方で自己組織化だけに注力するのでは組織はうまく回らず、それを補完するような別の要素も必要だと感じています。
それは仕事のオーナーを決めることです。


自己組織化は現場への権限委譲が進むので「スピード感持った臨機応変な対応」や「個人・チームの専門知識の進化」が強力なメリットだと感じています。
一方で現場視点での意思決定になるため「場当たり的な対処になり組織全体としては個別最適化に陥りやすい」点や、「民主的な決定にならざるを得ない」点がデメリットだと感じています。(特に民主的な決定には限界があることについては、世界各国の政治を見ればわかるとおりで歴史が証明しています。)

 

自己組織化を重視しつつも、そのデメリットを解消するために特定の仕事に対してオーナーを決めることが重要だと考えています。
オーナーは個人裁量で仕事の意思決定をし、そしてその結果に責任を持ってもらいます。

”独断”という言葉は「自分だけの判断に基づいて、勝手に行動すること」を意味し、基本的にネガティブな意味で使われます。
一方で変化を起こしたいときにすべての事柄を議論し合意をとってから進めるのでは、スピードが遅くなります。また和を重んじて議論の多数派意見に合わせることで、ベストな判断ができなくなります。
オーナーが中長期的な目線でのビジョンを持って自分自身の考えで決断することで、自己組織化のみでは到達できない大きな成果が出せると考えています。

 

一方で”独断”は仕事があらぬ方向に急速に進んでしまうリスクがあるため、仕事のオーナーを「どの粒度で、誰に任せ、どこまでの意思決定権限があるのか」を決めることが重要だと思っています(エンジニアリングマネージャーやテックリードの仕事になることが多いです)。
適切な対処ができる能力を持ったオーナーをアサインすることで、一貫性を持った意思決定・課題の早期発見・リスクを伴う判断が可能になります。
特にアーキテクチャAPIデザイン・UIコンポーネント設計・インフラストラクチャのような長期的な視野を持って一貫した意思決定をすべき仕事については効果が高いです。

 

 

というわけで、『自己組織化と独断という2つの概念は一見すると相反するもののように見えますが、単体では問題があるためそれらの良さをうまく両取りすることが大事』という話でした。