Melting Pot of Thoughts

SaaSスタートアップのCTOです。思考の整理のため考えたことをメモとしてアウトプットしていくブログです。

『ティール組織』より『ティール型チームで構成される階層型組織』

最近特にIT業界ではティール組織であることを標榜する会社がちらほら出てきているのを感じます。実際、ティール組織が目指す「セルフマネジメント」「ホールネス」「組織の存在目的」という目的は素晴らしく、今の世代の価値観に合う考え方です。

一方、大抵の場合は組織全体をティール組織にする必要は無く、『ティール型チームで構成される階層型組織』を目指したほうが良いんじゃないかと私は考えています。

 

 

まず大前提として、目的により適する組織形態は異なります。ティール組織であることが適するケースもありますし、逆に軍隊や役所のような組織においてはアンバー型と呼ばれるガチガチの規律と階層で囲われたトップダウンの組織構造が適しています。

ティール組織の考え方では、従来の企業をオレンジ組織と呼ばれる階層型組織だと定義し、それとは異なる新たな組織パラダイムとしてティール組織を提唱しています。このようにティール組織と階層型組織を全く別物と区別しているのがティール組織の考え方なのですが、私としては両者の良いとこ取りをしてやるのがいいと思っています。

具体的には、組織全体を完全なティール組織にするのではなく、基本構造は階層型組織にしつつその構成要素であるチームにはティール要素を取り入れるのが良いと思っています

 

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ティール組織は個々人が自律的に判断・行動を行うというモデルです。組織にはマネージャは存在せず、成果目標の管理や意思決定はチーム・個人の役割になり、人事評価は行われません。

なぜこのモデルが流行っているのかというと、既存の組織モデルでは「マネージャに成果目標管理・人事評価・意思決定の権限を与えると、それが濫用され、チームメンバーが言われたことを言われたとおりに行うだけになってしまう」問題があるからです。

言い換えると
・マネージャが現実的ではない成果目標を掲げることで現場が疲弊し
・マネージャが妥当ではない人事評価を行うことで不公平が生まれ
・マネージャが全て自分で判断したがることで現場が指示待ちになる
という問題です。

 

この課題感には個人的には強く共感できます。マネージャの権限は薄くして社員個人個人が裁量を大きく持ち、自身の業務範囲においては自分で成果目標の管理・意思決定をなるべく行うようにすべきです。そうすることで各々の個人の力が生かされ、自己組織化した活力あるチームになるからです。

一方で、ティール組織の特徴である「人事評価をなくし、最終的な成果・意思決定に対する責任者を定めない」という点については、そこまでやる必要があるのか?と疑問を感じます。そこまでやると組織全体からマネジメントの機能をなくしてしまうということと同義なので、次のような問題が出てきます。

 

問題1. 全体最適でない意思決定

社員個人個人ごとに判断精度が高い分野と低い分野があり、また判断材料のための情報の保有量にも差があります。どれだけ情報の透明性を担保したとしても、全社最適な判断ではなく自身の専門分野に寄った判断が多く成されるのは避けられません。

問題2. 役割間の狭間に落ちるボールがあること

従来の組織だと、階層構造になっていてマネージャという責任者がいるおかげで、特定の仕事の役割がどこの組織に属するものなのかが明確でした。しかしティール組織では役割が多く定義されており特定の仕事の責任が誰に帰属するのかが不明確になる問題があります。結果的に仕事の対応漏れであったり、コミュニケーションコストの増大が起こります。

問題3. チーム跨ぎの意思決定の難しさ

従来の組織だと、チームを跨ぐプロジェクトを行うときには、そのチームのマネージャを巻き込んでおけば問題がありませんでした。ティール組織だとマネージャがおらず、また個々人の役割が細かく定義されているため、多くの人々を巻き込みかつ合意形成を行うのに時間がかかってしまいます。

特に会社全体に影響するような意思決定をするのが非常に難しくなります。

 

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これらの問題を踏まえ、それでもあえて組織全体でティール組織にしたほうがいいケースがあるならば、とにかく権限を分散させたいケースだと思います。現場での機動力ある行動こそが大事であり、全体的な統制にそこまで重要度が高くないケースです。例えば看護サービスや飛行機内サービスなど、現場での臨機応変さが重要であるサービス業においては、ティール組織は強力な効果を発揮します。

 

 

一方で、ティール組織が目指す「セルフマネジメント」「ホールネス」「組織の存在目的」という目的を達成するには、別に完全なティール組織にする必要はなく、階層型組織の各チームをティール型にするだけでも達成可能です

ティール組織にすると権力を濫用するマネージャを強制的に退場させることができますが、階層型組織であったとしても企業文化やトップマネジメントの意思によってそういったマネージャをいなくすることはできます。

そういった背景で私は、チームが自己組織化しておりマネージャの権力濫用が防げてさえいれば、ティール組織ではなく階層型組織のほうがうまくいくと考えています。