Melting Pot of Thoughts

SaaSスタートアップのCTOです。思考の整理のため考えたことをメモとしてアウトプットしていくブログです。

当事者になることで見え方が大きく変わる

ここ4年で転職・引越し・結婚・出産・祖母の死去など、ライフイベントが色々ありました。また3年前からコロナ禍により、平日はフルリモート勤務で休日は外出自粛するライフスタイルへと大きく変わりました。さらに3年半前に転職したとき、会社には2名しかいなかったのが現在20名強まで増え、その過程で仕事内容も大きく変化してきました。

 

そういった大きな変化が何度もあった中で、今まで当然に考えていたことの前提が崩れ価値観が変わることが何度もありました。そして『当事者になることで見え方が大きく変わる』ということを学びました。

今日はこのテーマについて、実際の例を引き合いに出しつつ書いてみます。

 

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最初は多くの人が経験しているであろう『リモート勤務』を例に出します。リモート勤務をすることで仕事スタイルだけならずライフスタイルまでについても価値観が変わったという人は私以外にも多いのではないでしょうか?

コロナ禍が来る前から、リモート勤務や時差出勤のような柔軟な働き方は、女性が働きやすい社会の実現や満員電車問題解消の解決策ともなるため注目はされていました。しかしいざ導入となると強固に反対する人(主に会社上層部)がいるため、導入が進むことは一部の若い企業でしかありませんでした。しかし実際にコロナ禍でリモート勤務をせざるを得ない状況になったところ、その良さ・悪さを体感できるようになりました。

私も元々はリモート勤務は賛成ながらもフルリモート勤務(=毎日リモート勤務)には反対だったのですが、フルリモート勤務をせざるを得ない日々を実際に体験したことで、「定期的にリアルで会う場さえ設けられるのであればフルリモート勤務のほうがいい」という考えに変わりました。またリモートだと属人性が高かったり情報がクローズな組織だと円滑に回らないため、業務の標準化や情報のオープン化などを強く意識した仕事スタイルに変わりました。

またフルリモート勤務になったことで住みたい土地についても価値観が変わり、都心から千葉のベッドタウンへと引っ越しもしました。(私のような人は多いらしく、東京23区が2014年以降で初の転出超過になったというニュースもありました)

 

 

 

『育児』も当事者になることで価値観が大きく変わった例の一つです。先週ブログで書いたように、第一子が産まれ育児のため休暇を2週間とりました。

休暇中にじっくり育児を経験して感じたのは、育児・家事両方をやると一般的な仕事よりずっと大変だということでした。瞬間的な忙しさとしては仕事のほうが大変なのですが、育児は24時間年中無休で続く点で精神的なきつさがあります。

上述のブログ記事にも書いたのですが、2週間の休暇をとったことで育児の当事者としての自覚が産まれ、休暇明け後に具体的に何を手伝うかの話し合いを積極的に妻ともするようになりました。

 

またこれは妻の妊娠中からそうだったのですが、近所にある保育園が驚くほど目に入るようになりました。妊娠前は近所に1件あることは知っていたのですが、妊娠がわかったあとになると近所を散歩している最中に途端に目に入るようになり、実は6件ほどあることに気づきました。自分が当事者でなかったときには、保育園の前を何度も通っていながらも、認識することなく素通りしていたのです

 

さらに子供ができてから殺人・事故・虐待・パワハラ・わいせつ行為などの世の中の痛ましいニュースについて、今までよりずっと強く共感するようになりました。育児を経て、一人の子供を無事に成人させることの大変さが想像できるようになり、そういった一人の人間の尊厳を踏みにじる行為が関係者をいかに悲しませるかを、自分と自分の娘の立場に置き換えることでより具体的に想像できるようになったためです。

 

 

 

『当事者になることで見え方が大きく変わる』と似た考え方として、『お金を投じることでその分野に興味・関心を持ち続けられるようになる』という考え方を何度か聞いたことがあります。しかし私の個人的感覚としては、お金を投じるより実際に当事者になるほうが圧倒的にその分野への興味・関心が生まれます

元々私は自分が興味がある業界の会社の株を買ったりNPOに寄付をしていました。例えば病児保育・障害児保育などを手掛けているフローレンスというNPOに継続寄付をしていました。しかしニュースレターが毎月届くのですが正直そこまで深く入り込めないという気持ちでした。なぜなら”保育”が具体的な毎日の作業として何をどうやるものなのか(オムツ替えやミルク)、解像度高くイメージが持てていないため、必然的に病児保育・障害児保育という課題に対する解像度も高く持てなかったためです。

しかし実際に育児を経験したことで、この問題の重さについてとても詳細に感じられるようになりました。お金を投じていただけでは感じられなかったことが、当事者になったことで感じられるようになったのです。

 

 

 

仕事においても当事者になることで見え方が大きく変わる例はいくつもあります。

『マネージャ・リーダーになる経験は早いほうがいいし、一度はなっておいたほうがいい』というよく言われる考え方はまさにその一例です。やはりどれだけ日々視点を高く持とうと意識していたとしても、実際にその役割を演じることにまさる練習はありません。組織図上のチームのマネージャ・リーダである必要はないので、短期のプロジェクトででもいいのでそういった役割を演じる機会をなるべく得たほうがいいと思います。

他の例だと、新規事業やスタートアップに興味がある人が最近は多いですが、読書や自分の個人プロジェクトでは学べることに限界があるため、本当に興味があるのであればそういったことができる場所に転籍・転職すべきです。新規事業のノウハウなどは最近はフレームワークとして(例:リーンスタートアップ)世の中に広く公開されていますが、やはり実際にやってみるとそれをいかに自分たちの状況へ合うよう応用するかが大事だとわかります。

私の場合は「大企業の新規事業立ち上げ」と「スタートアップの立ち上げ」の両方を経験しましたが、両者は異なるということも当事者になったことで気づきました。ヒトモノカネが充実している大企業の新規事業立ち上げは自分の職種(例:開発)としての役割をいかにレベル高く果たすかがポイントですが、スタートアップではヒトモノカネが不十分なことが通常なのでその状態で最適な意思決定・行動を行うための事業視点・経営視点が身につきます。

 

 

というわけで以上、『当事者になることで見え方が大きく変わる』という話でした。